ちょっちミサトさん、その7

ただいまっ!

 日曜日お昼をちょっと過ぎた頃、ミサトがネルフから帰ってきた。いつも通り玄関からただいまの声、しかし声が荒々しい。

「ミサトさん、どうしたのかな?」

「さあ〜?拾い食いでもしたんじゃないの」

 ミサトの声は当然リビングに居たシンジとアスカに聞こえる。

「拾い食い〜〜?そんなアスカじゃあるまいし」

 ボコッ!

 シンジの言葉にアスカのゴットフィンガーが右頬に炸裂した。

「アンタねえ〜アタシが拾い食いするわけないでしょうが!」

「ご、ごめん〜〜〜〜」

 強烈な一撃、脳が揺れ辺り一面が回って見えたがなんとか意識を失わずにすんだ。

 ドダドダドダドダッ!ドンッ!

 廊下を地鳴りがするように踏みつけて歩き、部屋に入るなり襖を勢い良く閉めた。

「機嫌悪そうだね、どうしたんだろう?」

「そうね、別に関係無いけど〜」

 心配するシンジとは対照的にアスカは無関心、TVに興味を生じている。

 ドンッ!ドダドダドダドダッ!

 それから数分後、ミサトの部屋の襖がまた勢い良く閉められ足音が聞こえてくる。

「ミサトさん、どうした・・・・んですか?」

 ミサトの姿を見たシンジは思わず言葉が出なかった。ミサトの服装は普段家にいる時のタンクトップに短パンのラフな格好であったが、手には何故かちゃぶ台と大きな袋を持っていた。

「ミサトさん?」

「・・・・・・」

 シンジの問いに答えず、無言のままちゃぶ台をリビングの中央に設置し、大きな袋から何かを取り出しちゃぶ台にセットし始めた。

「ま、ままごと?」

「ミサトッ、どうしたの?」

 驚いている二人を横におままごと用のプラスチックの茶碗や皿を黙々と並べていく、そして・・・・

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

 数秒間、無言でちゃぶ台を見つめ・・・

こんちくしょう〜〜〜!!!

 ド〜〜ン!カチャ〜〜ン!!

 必殺ちゃぶ台返しが決まった。

「ぜえぜえぜえぜえっ」

「ミ、ミサトさん?」

「な、なにやってんのよ?」

 興奮して肩で息をしているミサト、シンジとアスカは何故そんな事をするのかわからない。

うえ〜〜〜ん!2人共聞いてよ〜〜〜リツコがね〜〜

 今度は二人に抱きつき泣き始めた。

「何があったんですか?」

「ええいっ!暑苦しいわね離れてよ〜」

 ドカッ!

「ふぎゃっ!」

 蹴り飛ばすアスカ、騒がれたり抱きつかれたりで邪魔である。

「アスカ、ミサトさんが可哀想じゃないか」

「良いのよ、どうせろくでもない事でしょう」

「うえ〜〜ん、アスカがいじめる〜〜〜」

 うずくまり涙が瀧のように流れる、果たして何があったのであろうか。

「ミサトさん涙を拭いてください、何があったんですか話してください」

「うう、シンちゃんありがとう、ち〜〜〜ん!

 豪快に鼻をかむ、その姿はミサトを美化している連中には見せられない姿だ。

「ええとね、ぐすっリツコがね、リツコが・・・」

「リツコさんが?」

「遅刻したくらいで給料引くとか実験台にするとか言うのよ〜〜〜」

「「・・・・・・・・」」

 ミサトの言葉に2人は何も言えなかった、それは当然だろう遅刻をするミサトが悪いのであるから。

「それってミサトさんが悪いですよ、遅刻したらいけませんよ」

「遅刻って言ってもね、ちょっと遅刻しただけなのよ。それなのに私が悪いかのように文句を言うのよ」

「「・・・・・・・・」」

 またしても何も言えなかった、遅刻をしても自分が悪くないように思っているミサトの考えが分からない。

「遅刻っていつも間に合うように出ているでしょう、それなのに遅刻するなんて何をしているんですか?」

 シンジは毎朝しっかりと起こしている、それに暴走運転で10分で着くので遅刻するのはおかしい。

「運転していると遠くの雲がどこに流れるか興味がでちゃってついつい追い駆けたくなるのよ、それで気がついたら遅刻しちゃってるの」

「「・・・・・・・・」」

 またしても何も言えなかった、出勤中に雲を追い駆けるミサトの考えが分からない。

「ねっ私はなにも悪くないでしょう」

「十分悪いわよ、雲追い駆けて何の得があるのよ?」

「何も無いけど、雲のようにふわふわなりたいな〜〜〜って思わない?」

「思わないわよっ!アンタの頭がふわふわじゃない、まったくクビになったらどうするのよ?アタシは養ってあげないわよ」

「えっ?そんな〜〜〜シンちゃんは養ってくれるわよね?」

 保護者が保護される立場になるのはプライドが許されないがミサトはそんな事は気にしない、ビールが飲めれば良いのである。

「アスカ、おやつにしようか」

「良いわね〜、ミサト!そんなとこに居たら邪魔よ、あっちに行きなさい」

ふぎゃっ!

 アスカは蹴り飛ばしシンジは無視して台所におやつを取りに行くのであった。

「ふ、ふえ〜〜〜〜ん!2人がいぢめる〜〜ペンペン〜〜〜」

 ペンペンを求めにミサトであったが冷蔵庫の鍵が閉められており、自室に戻り枕を涙で濡らすのであった。

「うえ〜〜〜ん、みんな冷たいのね〜〜〜」


 ミサトさん、自分は全然悪くは無いと思っています(笑)出勤中に雲を追い駆ける…社会人の自覚が全然ないですね。

 そんなわけでシンジ君とアスカちゃんは当然呆れてしまいました、不要家族はいりません(爆)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION ちょっちミサトさん、その7